番外編:「おっさんずラブ」という素晴らしいドラマについて語らせて欲しい②

えーと、↓の記事の続きでございます。

torikawaparipari.hateblo.jp

 

※これより先は「おっさんずラブ」6話のネタバレを含みます。

含みますが、またいつものように話の感想というより自分語りの意見文ですのでなんか色々ご注意くださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

このドラマのいいところ、というか特徴的なところは

「同性愛に対して偏見の目を持つキャラクター」が一人も出てこないことです。

男が男を好きになることに、驚きはすれどそれを否定したり「気持ち悪い!」ということを言うような人は一人も出てきません。

 

特に女性キャラの春田の幼馴染「ちず」や部長の元・妻「蝶子さん」は

同性が同性を好きになることになんの偏見も持たず、ナチュラルに周りと接する描写が非常に素晴らしくて際立ちます。

 

しかし逆を言えば、そこまで寛容的な環境下においても

牧くんはこれほどまでにズタズタに傷付くということです。

 

特に涙で目が霞むほど泣いたのが牧くんと春田のお母さんが対峙するシーンです。

所用で自宅に戻った春田母と牧くんが春田について会話を交わします。

家事もなにもできないだらしない春田に対し、

 

「一人息子だから甘やかしすぎたのかな。このままだと本当に結婚できないと思わない?」

「孫の顔だって見たいじゃない?」

「牧君、ずーっと創一の友達でいてね!」

 

終始、牧くんは笑ってやり過ごします。

ゲイであり、今現在春田とお付き合いしている牧くんのことを考えると

これほどまでに心に容赦なくナイフを突き刺すような言葉もないと思うほどにえぐい。

だって男である自分と付き合っていたら、

お義母さんに「一人息子」の「孫」を見せてあげることはできないし、

ずっと「友達」という関係でいることもできないのですから。

 

でも春田のお母さんに悪気はひとつもないのです。

だからこそ余計にえぐい。

きっと、春田のお母さんも「同性愛」に対して偏見や差別感情を持っていることはないと思います。春田のお母さんに「同性愛についてどう思うか?」尋ねたらきっと「偏見はない」と答えると思います。

それは自分や身の回りには関係ないヨソのことだと思っているから。

偏見や差別云々の前に「男性は女性と恋愛するもの」という

どうしようもなく普遍的で揺ぎ無い常識が頭にこびりついているからです。

 

自分に当てはめたとき、私も知らず知らずのうちに春田のお母さんと同じようなことをしているのかもしれないと怖くなりました。

 

私は腐女子です。

学生の頃からずーーーーっとBL作品を愛読してきました。

それこそ少女漫画の何倍も何十倍も。

「男性が男性に恋をする描写」を思春期の頃から擦り切れるほど叩き込んでいるので

「同性愛」に対して偏見などはもちろんありません。

そういった趣味がない人に比べれば遥かに順応性が高いほうだと思います。

 

でもそれを遥かに凌ぐ感覚として「男性は女性と恋愛するもの」

という揺ぎ無い常識が頭にこびりついているのも事実です。

 

今まで、目の前で話している男性が男性を好きかもしれないなんてこと、考えたことがありません。

フリーの男性と話している際、話の流れで「彼女つくんないの~?」なんて言ったこともたくさんあります。悪気もなく。

逆に「彼氏つくんないの?」と言われたこともたくさんあります。

 

もし男性の方から「俺はゲイなんだ」と言われればもちろん偏見はありません。

最初に驚きはすれど、気持ち悪いなどと思うことはないです。

実際、知り合いにもいますがそういう感情は持ちませんでした。

でも言われなければわからないのです。

だから知らず知らずのうちに傷付けているのかもしれないのです。

 

「自分は腐女子でBL作品に対して、抵抗がないから同性愛に対しても差別はない」

とずっと思っていました。

だからニュースでLGBTがどうの~という話題が出ても、

「偏見なんて元からないから私には関係ない」と思っていました。

 

でも普遍的に「男女の恋愛が当たり前」と思っている時点で

偏見はないにしても、まだまだ完全に寛容的になっている考え方ではないんだ、と思いました。

なにもかも分かったつもりになっていて本当は何一つ大切なことは分かっていなかったんだ、と猛烈に反省しました。

 

そんな「悪気のない常識」と牧くんはずっと戦っていたのかと思うと、

もう心がどうしていいかわからなくなりました。

 

今までBL作品を読みながら「同姓を好きになってしまった葛藤」に

心をグッと掴まされ、萌えていました。

「せつない~萌える~」なんてヘラヘラ言ってました。

それは「設定」だと頭でわかっているから。

自分には直接関係のないことだから。

 

でも設定なんかじゃなく、リアルでこの葛藤を感じるということが

どれほど苦しくてつらいか、ドラマを観て本当に今更でお恥ずかしいのですが思い知りました。

そしてそんな「葛藤」は社会全体で幾分にも軽減できるんじゃないかと思いました。

 

そのために自分自身が気をつけなければいけないこともまだまだあるんじゃないかと思いました。

この感覚が本当の「LGBT」への理解なのかなと思いました。

 

また、このドラマの印象に残っている台詞で

「好きになっちゃいけない人なんていないんじゃないかしら」

というものがあります。

 

本当に皆が皆、そう思うような世の中になってほしいなと心底思いました。

このドラマは男同士という同性同士の恋愛もありますが、

年齢差が大きい人同士の恋愛など他にも様々な恋愛模様がでてきます。

 

5話の台詞で牧くんが「周りはいつだってうるさいです。」と言います。

今までずっとずっと悪意があるなしに関わらない偏見を受け続けてきたんだなと思いました。

そう、周りはうるさいのです。

それは牧と春田に降りかかる性別だけの問題じゃありません。

 

年齢差があれば「なんでそんな年下(年上)と?」

格差があれば「なんでそんな仕事の人と?」

国籍が違えば「なんで外人と?」

逆に結婚しなければ「なんで結婚しないの?」

挙げればキリがないほどこの世には悪気のない常識が溢れ返っています。

 

特に今はTwitterなどのSNSが普及しているので更にこれらが溢れ返っているように見えます。

自分の中の「当たり前」が周りの人にとっても「当たり前」なのだろうか。

本当、もっと考えなきゃなと思いました。

 

 結局その後、牧くんはそういうものに飲み込まれて、不安になっていきます。

さらに追い討ちをかけるように、

 

春田の幼馴染で女の子であるちずが春田に告白し、

春田が思わず抱きしめてしまうシーンを目撃してしまいます。

 

ちずは自分と違って、「一人息子」の春田の「孫」をお義母さんに見せてあげることができる存在。

目の前に立ちはだかる大きな大きな「常識」通りの"普通の恋愛"ができる相手。

 

自分のことを後回しにて、相手の幸せを第一に願う牧くんの優しい性格が更に更に牧くんを苦しめます。

そして6話のラスト、牧くんは大好きな春田と付き合っているのに

 

「結局、幸せじゃないんですよ俺。

春田さんと一緒にいても苦しいことばっかりです。」

「別れましょう」

「もう春田さんのこと好きじゃないです」

 

と言います。

大好きな人にこんなこと言わなきゃいけない心境。

あまりにつらくて見ていられませんでした。

ただ好きな人ができただけなのに。恋愛をしただけなのに。

 

ここあたりで6話は終了しています。

その後、牧くんは家を出て、なぜか春田は部長と同棲してたり

誰かと結婚フラグが立ってたりと、なにかと脳が追いついていない次回予告が流れるのですが。(笑)最終回どうなるんだ~!?

 

まず6話を見て個人的に感じた感想が、

「悪意のない常識」を相手に知らない間にぶつけていないか

もっと考えなきゃいけないと反省したことです。

 

そして物語的な感想としては、

全員に幸せになってほしい。

これを願うのみです。

話の流れ上、幼馴染のちずちゃんについてあまり触れられませんでしたが、

この子も本当にいい子です。

牧くんに対して偏見を持つことがないどころか、

牧くんと春田の関係を尊重して思いやる姿勢が徹底しています。

 

主人公の春田も、牧くんの心情が見える視聴者からすれば

デリカシーのかけらもない人に見えてしまいますが、

一生懸命牧くんや部長に向き合おうとする気持ちが痛いくらい伝わります。

 

他にもたくさんの人が登場します。

みんながみんな、好きになった人に一生懸命になっている人ばかりです。

誰が誰とくっつくか最終回までわかりませんが

とにかく皆に幸せになってほしいです。

そしてとにかく最後に牧くんには笑っていて欲しいです。

「今、幸せです」と思っていて欲しいです。

それが春田とくっつくことでも、そうじゃない結末だとしても。

 

初めに観たときは「なんて萌えるBLドラマだ!」と思いました。

でも前言を撤回して

「全員を応援したくなるほどに素晴らしい恋愛ドラマだ!」

と今では声を大にして言いたいです。

 

これは腐女子向けでも、BL要素で釣るためのドラマでもなんでもないということが

観たら痛いくらいわかりました。

みんながみんな、私たちと同じように誰かを好きになって、嬉しくなったり苦しんだりする正統派の恋愛ドラマでした。

 

あと1話で終わってしまうのが信じられません。

絶対ロスに陥る・・・

 

 

※もし同性愛者の方がこの記事を読んでどう思うかはわかりません。

まず率直に自分の思った気持ちを文字にしようと思い、書き起こしました。

不快に思う点などがあれば、ご連絡頂ければすぐに削除いたします。

 

 

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